夏の体調管理大丈夫ですか?-熱中症と夏型過敏性肺炎-

夏の体調管理大丈夫ですか?-熱中症と夏型過敏性肺炎-

夏の体調管理大丈夫ですか?-熱中症と夏型過敏性肺炎-

高温多湿の夏に体が対応できなくなり、体がだるい、食欲がない、体が熱っぽい、頭痛がする、めまいや立ちくらみがする、疲労がとれないなどさまざまな症状が出ます。またウイルスなどの感染に立ち向かう免疫力も低下します。このように、夏に起こる体の不調が夏バテです。今回は、夏に多い熱中症・夏型過敏性肺炎について学んで、厳しい夏を乗り越えましょう!

済生会泉尾病院 副院長 総合内科/呼吸器内科 医師 江口 典孝

熱中症の症状

熱中症とは、体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かくなったりして、体温の上昇やめまい、けいれん、頭痛などのさまざまな症状を起こす病気のこと。
重症度によって、次の3つの段階に分けられます。

  • Ⅰ度:現場での応急処置で対応できる軽症
    ・立ちくらみ(脳への血流が瞬間的に不十分になったことで生じる)
    ・筋肉痛、筋肉の硬直(発汗に伴う塩分の不足で生じるこむら返り)
    ・大量の発汗
  • Ⅱ度:病院への搬送を必要とする中等症
    ・頭痛、気分の不快、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感
  • Ⅲ度:入院して集中治療の必要性のある重症
    ・意識障害、けいれん、手足の運動障害
    ・高体温(体に触ると熱い。いわゆる熱射病、重度の日射病

乳幼児や高齢者は、熱中症を起こしやすいので、暑い日や湿度の高い日には特に気をつけましょう。

なぜ熱中症に?

人は運動や仕事などで体を動かすと、体内で熱が作られて体温が上昇します。体温が上がった時は、汗をかくこと(気化熱)や、体の表面から空気中に熱を逃がすこと(熱放散)によって、体温を調節しています。平常時は、こうした体温を調節する機能がうまく行われるため、人の体温は36℃から37℃くらいに保たれています。
しかし、気温や湿度が高い環境で激しい運動を行うと、体内で作られた熱をうまく外に逃がすことができなくなります。さらに、そのような環境の下でいつも以上に運動や活動を続けると、体がどんどん熱くなり、汗をかいて体の水分や塩分が減っていきます。

そうすると、体内の血液の流れが悪くなり、体の表面から空気中に熱を逃がすことができなくなり、汗もかけなくなります。このように体温の調節がうまくできなくなると、体の中に熱がたまって体温が上昇します。
脳を含む重要な臓器は、37℃以下で一番うまく働き、体温が高くなると機能しにくくなります。また、汗をかいて体から水分が減少すると、筋肉や脳、肝臓や腎臓などに十分に血液が行き渡らないため、筋肉がこむら返りを起こしたり、意識を失ったり、肝臓や腎臓の機能が低下したりします。こうして体の調子が悪くなって、熱中症が引き起こされるのです。

※一般財団法人日本気象協会 ホームページより抜粋

熱中症を防ぐには?

いつでもどこでもだれでも条件次第で熱中症にかかる危険性がありますが、熱中症は正しい予防方法を知り、普段から気をつけることで防ぐことができます。
例えば、初夏や梅雨明け・夏休み明けなど、体が暑さに慣れていないのに気温が急上昇するときは特に危険です。無理せず、徐々に体を慣らすようにしましょう。

こんな人は要注意

  • 高齢者
  • 乳幼児
  • 運動習慣がない人
  • 太っている人
  • 体調がよくない人
  • 暑さに慣れていない人

熱中症で済生会泉尾病院に運ばれたら

通称「FIRE」と呼ばれている事を基本とします。すなわちFluid(水分・塩分補給)・Ice(身体冷却)・Rest(安静)・Emergency(緊急性の判断)がポイントです。安静にしながら、静脈路を確保して生理的食塩水もしくはリンゲル液を点滴します。前頸部・腋窩・鼠径部の冷却、ゲルパッド法(Arctic Sun)や水冷式冷却マットによる水冷式体表冷却、血管内冷却カテーテル(サーモガードシステム)による深部冷却など実施可能な方法を用いてすみやかな体温冷却を目指します。
体表面での温度よりも深部体温が重要です。直腸に体温計を入れて体温を測るか、温度センサー付き尿道カテーテルを尿道から入れて、深部体温を測りながら尿量のモニタリングも行います。医師としては当たり前ですが、一般に聞くとびっくりする話ですね。
熱中症はお亡くなりになったり、後遺症を残したりする病気なので、済生会泉尾病院では危険性を判断して入院して頂くこともしばしばです。恐ろしい病気であることを認識して早めに受診してください。

夏型過敏性肺炎とは?

夏型過敏性肺炎の症状

イラスト

夏型過敏性肺炎とは、カビの一種であるトリコスポロンが、体内に入ることで引き起こるアレルギー反応です。トリコスポロンは自宅の台所や浴室にも多く繁殖するカビであり、またエアコンが原因となる事が多いため流行時期は 6月~10月とされています。
多くの場合は抗原となるカビを吸い込んでから4~6時間後に、咳や痰・発熱などの軽い風邪のような症状で始まる事が多いです。しかし、風邪だと思って放っておくとどんどん症状が重くなり、次第に息切れなどの呼吸困難を伴う肺炎の症状が現れるようになります。症状は8~12時間持続しますが、その環境のままだと症状はそれ以降も続き、その環境から離れると数日から10日程で治ってしまいます。
環境の改善をせずこの状態を何年も繰り返すと、肺が繊維化し、厚くなって肺繊維症という慢性的な病気につながる場合もあります。

なぜ夏型過敏性肺炎に?

トリコスポロンが体内に入るとアレルギー反応が起こり、発熱や咳等の症状を発症します。トリコスポロンは、高温多湿(気温20℃以上、湿度60%以上)で活発になり繁殖しやすく、特に台所や浴室等の水回りや、エアコン内部、布団でよく繁殖します。また、胞子はとても小さく飛散しやすいため、吸い込むと肺の奥まで入り込み、肺炎が引き起こされます。
軽症であることが多いため、ほとんどの人がたいした病気と思わず放置してしまいがちですが、毎年発症を繰り返すことで慢性化し、心不全等の重症化につながります。
高温多湿の時期に、決まって風邪のような症状が出る場合は、夏型過敏性肺炎の可能性があるため、呼吸器内科を受診しましょう。

夏型過敏性肺炎を防ぐには?

一番の対策は、カビを除去し、再繁殖しない環境を整えることです。

(1)掃除をしましょう。

すでにカビが生えてしまった部分を清掃する場合は、市販のカビ取り剤を使用しましょう。

  1. 押し入れ・クローゼット
    湿気がたまらないように、定期的にドアを開け、空気の流れを良くしましょう。
    また、除湿剤の活用も有効です。
  2. エアコン
    夏時期に向けて、冷房の使用頻度が増加します。冷房を使用するとエアコン内部に結露が発生し、 カビが繁殖する原因となります。カビの繁殖を防ぐため、使用後は30分~1時間ほど「送風」を行い、エアコン内部を乾燥させましょう。また、フィルター掃除は、1~2週間に1回を目安に行い、カビ用洗浄スプレーの活用も合わせて行うと有効です。
  3. 浴室・キッチン等の水回り
    水が溜まりやすい凹凸のある床や壁は、タオルでしっかり拭き取りましょう。
    また、浴室の隅やゴムパッキン等、汚れが残りやすい場所にもカビが繁殖しやすいため、念入りに掃除しましょう。
  4. 寝具(特に布団)
    布団は、可能であれば天日干しを行いしっかり乾燥させた後、掃除機をかけ、表面のホコリを取り除きましょう。
    天日干しができない場合は、日当たりの良い部屋で、椅子に掛けて風通しを良くする等、乾燥・除菌対策を講じましょう。

(2)カビの繁殖を防ぎましょう。

カビの繁殖条件は、「湿気、温度、栄養、酸素」の4つです。
この中で、湿気(水分を取って乾燥させる)は対策がしやすく、カビの繁殖対策に有効であり、加えて水気を拭き取った後に、アルコールで再度拭くとより効果的です。また、室内の除湿方法は、こまめな換気、除湿剤の使用、エアコンの除湿機能の使用、扇風機・サーキュレーターで空気を循環させる等があり、これらを活用し湿度を40~50%に保つようにしましょう。

(3)生活習慣を見直し免疫力を高めましょう。

免疫力の低下を防ぐためには、「食事・睡眠・運動」が重要です。
しかし、免疫力が上がり発症しなかったとしても、カビが無くならない限り吸い続けてしまうため、カビの発生源は清掃しましょう。また、喫煙は肺炎の悪化を早める傾向にあります。
※ニコチンはカビによるアレルギー反応を抑える作用があり、カビを吸い込んでも症状が表面化してこないため、気づかないまま病状が進行し、気づいたときは重症化している危険性があります。

こんな人要注意
  • 体力が衰えていたり、疲れていたり、病み上がりなどで抵抗力の少ない方
  • もともと肺疾患のある方
  • 喫煙されている方
  • 衛生上悪い環境にお住まいの方(ベランダに鳥の糞がある等)

実際に済生会泉尾病院で経験した過敏性肺炎は?

  1. 夏型過敏性肺炎(原因:トリコスポロン)一番多いです。
  2. 住居関連性過敏性肺炎(原因:トリコスポロン以外のカビ)
  3. 鳥関連過敏性肺炎(原因:鳥糞・羽毛)
  4. 加湿器肺炎(原因:真菌・細菌)
  5. 塗装工肺炎(原因:イソシアネート)

治療は原因から離れることが第一です。
済生会泉尾病院を受診されたときには既に重症で酸素投与が必要な人も多く見られます。このため、入院して頂くことも多いです。入院して原因から離れて頂きます。入院中に原因を特定して排除するのが一番ですね。夏型過敏性肺炎は意外に多く見られる病気です。咳が続く、少し息苦しい、微熱があるなどの症状があれば、受診してくださいね。

泉尾健康DIARY