その「冷え」大丈夫ですか?

その「冷え」大丈夫ですか?

その「冷え」大丈夫ですか?

暑い夏がようやく終わったと思ったら、急に寒くなってきました。「足先が冷たい」「足先が紫色になっている」「足が痛い」こういった症状はありませんか?寒いから、冷え性だからと思っていませんか?動脈硬化が原因の可能性もあり、今回は足の血液が悪くなる下肢閉塞性動脈硬化症(ASOやPAD、LEADと略されます)についてお話ししたいと思います。

済生会泉尾病院 血管外科 部長 坂下 英樹

下肢閉塞性動脈硬化症

下肢動脈硬化症とは、文字通り動脈硬化が原因で血管が硬く細くなって、詰まってしまう病気です。動脈は心臓から送り出される血液を全身に運ぶ役割で、本来は弾力性があってしなやかな組織でできています。しかし加齢による組織の変化や、喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの病気によってダメージが加わりつづけることで、動脈は弾力を失って硬くなっていき、ダメージを受けた動脈の壁の内側にコレステロールなどが沈着しプラークを形成します。プラークが破綻すると血栓(血のかたまり)ができて、血管が狭くなったり、詰まってしまったりします。これにより足の血流が悪くなりますので、さまざまな症状(虚血症状)が出現します。

どんな症状ですか?

フォンテイン分類といってⅠ度(軽度)~Ⅳ度(重度)まで4段階に分けられていますが、Ⅰ度からⅣ度へ進行していくわけではなく、いきなりⅣ度で見つかることもあります。

●フォンテインⅠ度
足のしびれや冷感(冷たい)といった症状です。

●フォンテインⅡ度
歩いていると足がだるくなったり痛くなったり、休むと再び歩けるようになるといった症状で、間欠性跛行といいます。この疾患の代表例な症状ですが、症状が回復するので病気だと思われない方もいらっしゃいます。また整形外科の病気でも同じ症状が出ることがあります。

●フォンテインⅢ度
じっとしていても痛みがあり、痛みで夜も眠れないといった状態です。

●フォンテインⅣ度
足にできた傷がなかなか治らず、壊死に至る場合もあり、足の切断が必要となるケースもあります。

どのように診断しますか?

専門医が患者さんの足を診断して冷たさや痛みの程度を確認し、足の脈を触れることから始まります。診察により閉塞性動脈硬化症が疑わしい場合は、検査を行っていきますが、足の血流を調べる検査としては、ABI(足関節上腕血圧比)、エコー(超音波)などがあり、患者さんにとって負担の少ない検査です。
これらの検査で閉塞性動脈硬化症と診断されれば、狭くなったり詰まったりしている血管の場所や長さを調べるために造影剤を使ったCTや血管造影を行っていきます。

どうやって治療しますか?

内科的治療と、血行再建(血流を改善させます)を行うカテーテル治療(血管内治療)と外科的治療があります。
内科的治療はお薬と運動療法で、後述しますが、全身の動脈硬化に対するリスクファクターの管理(血圧・血糖コントロール・脂質管理など)と生活習慣(禁煙・食生活の改善・運動など)の改善が基本治療となります。

◆カテーテル治療(血管内治療)
足のつけねや腕の血管を刺してカテーテルという細い管を入れていき、狭くなったり詰まっている血管を風船(バルーン)で広げ、ケースによってはステントと呼ばれる金属の筒を留置します。

◆外科的治療
代表的なものはバイパスで、人工血管や自分の静脈を用いて血流が悪くなった部位に変わって新しい血液の道を作成します。
閉塞性動脈硬化症は自然予後のいい疾患ですので、無症状の患者さんに血行再建を行う必要はありません。血行再建の適応症例に対しては、血管内治療、外科的治療どちらも一長一短がありますので、個々の患者さんの全身状態や病変の部位や長さを総合的に考えて治療法を選択、あるいは組み合わせて治療を行っていきます。

最後に、動脈硬化は足の動脈だけに起こるわけではなく全身の血管に及ぶ病態で、代表的な臓器としては心臓と脳で、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった疾患にあたります。閉塞性動脈硬化症の5年生存率は大腸癌よりも悪く、死因は心疾患と脳血管障害で66%にのぼるといったデータもあり、閉塞性動脈硬化症をきっかけに心疾患や脳血管障害の早期発見が重要で、動脈硬化に対するリスクファクターの管理(血圧・血糖コントロール・脂質管理など)と生活習慣(禁煙・食生活の改善・運動など)の改善が重要となります。

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